スキー雑感 其の1
学生の頃、ひょんなきっかけからスキーを始める事にした。
実は雪国で生まれ育ったにもかかわらず、スキーをした事が一度もなかったのである。
運動が大の苦手だった事も手伝い、ウインタースポーツは小さい頃に誘われて行ったスケート1回だけだったと記憶している。
そのスケートも当然のごとく転倒の連続で、どうにかヨチヨチ歩きができる程度で終了。
決して楽しかった思い出はなかった。
やがて月日は流れ、中学、高校、大学と進むうちに、上手い下手は別として、スポーツへの苦手意識は徐々に薄れて行った。
そんな中、大学の学友から雪国育ちなのにスキーができない事を驚かれてしまう。
「ならば!」
少々意地も手伝って、スキーくらい滑れるようになってやろうと思い立ったのだった。
そして早速用具一式の準備にとりかかる。
そこそこ滑れるようになればいい程度の気持ちだったので、用具へのこだわりはゼロ。
しかも世間ではスキーブームが始まっており、知り合いの伝手で容易に中古品を安くそろえる事ができた。
ここで、のちに大きな惨事をまねくミスを犯す事となる。
スキーとブーツを、それぞれ別のルートで入手したのだが、調整の方などを全く理解しないままゲレンデへと向かってしまった。
スキーブーツは、ビンディング(留め具)で板と固定される。
ビンディングは、転倒などの際に無理な力が加わるとブーツと板を瞬時に開放してくれる、いわば安全装置のような役目がある。
漠然とは知っていたが、細かな調整など素人の身では知る由もない。
当然ながら今のようにネットで簡単に検索ができる時代でもなかった。
固定さえできれば、たぶん大丈夫程度に甘く見てしまっていた。
さらに悪いことに、出向いたスキー場が自宅から10分の地元の小さなスキー場。
常設のスキースクールなどは無く、また、チョッと滑ればコツをつかめるだろうという自惚れも正直無かったとは言えない。
用具のセッティングも練習も全て我流。
その結果、何度か転倒するうちに無理に固定したブーツがスキーから開放されず、膝の靭帯を損傷してしまう。
スキーを甘く見た代償は、ギプスと松葉杖のお世話という惨めな結果を招いたのであった。