気分転換の大切さ
病んで休職していた間、何をしたかというと得に何もしなかった。
然るべき施設への入院も勧められたが、自分が最もリラックスできる場所として選んだのが自分の実家だった。
自宅から車で約30分ほど走った辺鄙な山里の小さな村が自分の故郷である。
今では地域でも1~2を争うほどの限界集落となってしまったが、山々に囲まれた自然の豊かさは昔と変わりない。
虫の声や鳥のさえずり、木々を渡る風の香り、屋根をたたく雨の音、全てが最高の癒しになった。
気が向けば裏山に登って栗を拾ってみたり、その年大豊作だったイチョウの実を大量に集めて銀杏作りに励んだりした。
悪臭を放つイチョウの実の果肉を水で洗い流しながら下処理するのは少々面倒な作業ではあるが、当時の自分にとってはもってこいの気分転換になった。
仕事を離れて静かな環境でのんびりできた事もあり、幸いにも徐々にではあるが体調は快方に向かったのである。
年が改まってから復職を果たしたが、まだまだ本調子ではなかった。
そんな中で気分転換にトライしたのがスキーだった。
独身時代、冬場の休日の多くはスキーに費やすほど夢中になっていたが、それも結婚を機にほとんど行く事がなくなっていた。
行きたい欲求を無理やり我慢をした、ある種の自己虐待だったように思う。
久々のゲレンデは最高に気持ちが解放された。
全てを忘れ、刻々と変わる雪面状況を感じながら納得の行くターン弧を描く事だけに集中。
スキーの楽しさを再認識した次第である。
心身ともに健康であるためには、適度なガス抜きは絶対に必要なのだ。
方法は人それぞれだろう。
スポーツで汗を流す事。
映画を見に行く事。
買い物で発散している人もいるだろう。
自身の場合は、里山の自然に触れる事や夢中でゲレンデを滑る事などが英気を養う最高の手段だった。
生きている間、人は多かれ少なかれ何らかのストレスと付き合って行かなければならない。
そして心の悲鳴に気付けなかったり無視をしていると、突然心は折れてしまうものなのだ。
自分自身へのご褒美は、思っている以上に重要な意味をもっている。